最近、商用車のナンバープレート横に「働きやすい職場認証」のステッカーが貼ってあるのを見かけたことはないでしょうか。
働きやすさは主観だと思うのですが、第三者が「この職場は働きやすい!」というお墨付きをくれるのです。
実際、その職場で働いている人達は本当に「働きやすい」と思っているのか?とも思いますが、自信満々にステッカーを貼っている車を見かけたので、今回は「働きやすい職場認証制度」について調べてみたいと思います。
「働きやすい職場認証制度」は「自動車運送事業者」が対象
「働きやすい職場認証制度」は2020年9月に初めての申請を開始しました。慢性的な人員不足に悩むトラック・バス・タクシーの「自動車運送事業者」を対象に国土交通省が創設した制度で、いわゆる「働き方改革」の一環です。この制度を実際に実施する団体は「日本海事協会」になります。
この「自動車運送事業者」はこれまで労働環境や労働条件が劣悪であり、従業員確保の為にも労働環境の改善は重要課題でした。審査を通過し、初めて「働きやすい職場」として認証されたのは2,548社でした。
「自動車運送事業者」の問題点は労働条件の悪さからくる人手不足
トラック事業者を例に挙げると、ネットショッピングの利用率が上昇を続けている事で、人手不足にも関わらず仕事量は増え、労働環境は悪化の一途をたどっています。平成27年度の総務省発表によると、全世代で約7割がネットショッピングを利用しています。
「重いものを持ち帰りたくない」という理由でネットショッピングを利用する高齢者も多く、これはトラック事業に従事する人の負担になっています。これではこうした業界に就職しようという人も減少する一方です。
参考:総務省「平成27年度版 情報通信白書」より「インターネットショッピングの利用状況」
「働きやすい職場認証制度」のメリットは取り組みが可視化されること
「働きやすい職場認証制度」の審査要件には
- ①法令順守等
- ②労働時間・休日の確保
- ③心身の健康に努める
- ④安心・安全を守る
- ⑤多様な人材の確保・育成
の5分野について、基本的な取組み要件を満たしているかで審査されます。併せて、自主的・先進的な取組みを参考点として点数化して3段階評価されます。
認証されるという事は、上記の取り組みが認められたという事になります。ちなみに2020年度は全事業者が★1つのスタートでしたが、本来★★★3つが最高ランクとして位置づけられているようです。
「働きやすい職場認証」の有効期限は1つ星で2年
この制度はスタートしたばかりで全事業者が1つ星の為、2つ星3つ星の場合の有効期限は定かではありませんが、1つ星の事業者の有効期限は2年間です。
認証取得に向けての助成金を創設する自治体もある
公益社団法人「長野県トラック協会」のように、業界全体のイメージアップをはかる為に認証取得に向けての助成金を創設した自治体もあります。この助成金は東京海上日動火災保険が支援しています。
まとめ:「働きやすい職場認証」は「過渡期でも環境改善に取り組んでいる」証明
私が当初予想したような、日本全国の事業者を対象としたものではなく、「自動車運送事業者」に限定された認証制度でした。しかし、裏を返せば自動車運送事業は「国も認める環境の劣悪さ」ということになります。
確かに私も一時期、大手の運送会社に事務として働いていましたが、ドライバーさんは営業所に仮眠室があり、そこで寝泊まりして1ヶ月自宅に帰れていないという人がザラにいました。「ブラックだなぁ…」と思ったのを覚えています。
これでは新規採用以前に今いる従業員たちが心身共に壊れていくでしょう。しかしながら企業の体質というものはそう簡単には変わりません。
「働きやすい職場認証制度」はこうした悪しき体質に一石を投じる良い制度なのではないでしょうか。運送業は日本経済においてとても重要な役割を果たしています。ぜひ真剣に取り組んで頂き、業界全体の環境が良好になるよう願いたいものですね。